今般の新型コロナウイルス感染症により様々な影響を受けられている皆様にお見舞い申し上げます。
前々回のコラムで学校給食におけるフードロスの問題を紹介「コロナに負けない! 学校給食休止に伴う食品ロスの抑制や販売機会の創出に向けた取り組み「食べて応援!学校給食キャンペーン」」しましたが、教育を受ける側の学生の方にも大きな影響が出ていることは既報の通りです。
世帯収入の激減や学生の方が飲食店を中心に各種サービス業でのアルバイトが出来ないこと等によって、学費や生活費の確保が厳しい状況が起きており、なかには大学を休学・退学せざる得ない方も出ているとメディアでも報じられております。(学生団体のネット調査では大学生・短大生等の13人に1人が退学を検討しているとの報告もあります)
また、授業についてもリモートやオンラインでの開講が進められていますが、ネット環境やPCやタブレット等の準備に追加費用負担が有る中で学生はもちろん、システムを導入する大学側も含めて苦慮している状況があります。学生側からも学費減免等を求める署名運動も関東の大学を中心に起きています。
教育はSDGsでも「4.質の高い教育をみんなに」と掲げられており、他の目標を達成させる為にも重要な要素です。このような中で各大学や国・機関による支援の動きが出ていますので一部ですが紹介させて頂きます。これらの情報が少しでも役に立てば幸いです。
※本記事は2020年4月30日時点の情報を基に作成しております。政府・文部科学省を中心に様々な検討(9月入学学年開始など)が進められており、今後内容の変更や新しい支援策が導入される可能性も十分にありますので、各支援機関や教育機関のHP等をチェックされることを推奨いたします。
学費負担について(納付延期や奨学金・学校による独自給付について)
大学・短期大学・専門学校によっては学費の納入延長や一部免除等を行っています。まずは学校にお問い合わせください。
基本的には、日本学生支援機構の奨学金を利用することになります。その中でも、コロナウイルスの影響による収入減少によって住民税非課税基準を満たす世帯は、今年度より開始された高等教育の修学支援制度(高等教育の無償化)を利用することが出来ます。
これは、日本学生支援機構の給付型奨学金と各大学の授業料減免を組み合わせて、実質無償ないしは学費負担を大幅に減らすことが出来る制度です。給付型奨学金ですので、卒業後の返済も不要です。全ての学校が利用できるわけではないこと、中には既に受付を終了している学校もありますので詳しくは在籍校にご確認ください。また、この制度が利用できるのは日本国籍を持っている学生等に限定されています。要件に該当しない学生の方(大学院生や留学生)向けに別途大学独自の授業料減免制度等を設けていることもありますのでそちらもご確認ください。本制度の対象となっている学校についてはこちら(文部科学省HP 対象教育機関一覧)をご確認ください。
また、この制度ではカバーできない方については同じく日本学生支援機構の貸与型奨学金があります。こちらは返済が必要です。無利子のものと有利子のものがあります。無利子の奨学金は当人所得に応じた返済額で返済を行う制度(所得連動方式)が用意されています。この制度を利用する際は機関保証と呼ばれる月々の保証料を払うことになっており、保証人を用意する必要はありません。(=ご親族等に返済リスクが及ばない)
文科省の修学支援制度全体像については下記を参照ください。
(出所:文部科学省 新型コロナウィルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ より)
ご自分の世帯が収入減によって住民税非課税世帯に該当するかは上記リンク先にある進学資金シュミレーターをご活用いただいた上でご確認ください。
一部の大学(福岡大学など)は、日本学生支援機構とは別に大学として独自の奨学金(緊急貸与)や授業料減免を用意していることもありますので自校HPの確認やお問い合わせをお勧めします。(福岡大学の情報はこちら)
オンライン授業受講に伴う支援やその他学生生活に関する支援について
各機関でオンライン授業受講や生活に関連する支援なども構築・検討が進められています。幾つかの例をご紹介します。
九州大学では、4月28日に学生生活に支障が生じている方に対する緊急学生支援金制度を4月30日を目途にアナウンスする旨が学長から案内されています。(案内文章はこちら)
福岡大学では、オンライン授業受講に伴う費用負担の一部を支援する観点から修学支援金として1万円(相当のギフトカード)を支給する取組を行うことが案内されています(福岡大学 遠隔授業の実施に伴うインターネット環境整備に係る経済的支援について)し、西南学院大学でもオンラインによるメディア授業受講に必要な経費を無利子で10万円を上限に貸付すること(西南学院大学 オンラインによるメディア授業の実施に伴う無利子貸付制度)を行っています。
また、オンライン授業受講に伴い、学生の方の通信量増加が起きるものと考えられます。授業の受講に際して、この通信料超過分の無償化等の対応を行っている通信事業者も有ります。携帯電話キャリア毎で別途手続きが必要になりますので詳しくは下記から各キャリアの情報をご覧ください。
学生等の遠隔授業等を活用した学習のために、携帯電話の通信容量超過分の無償化等の措置が実施されています。(総務省HP)
ひとり暮らしの学生の中でも特にアルバイト等で授業料や生活費を捻出されている方はシフトに入れない等の理由で収入が減少し、生活が厳しくなっていることも増えています。その際にも高利な借り入れではなく、各地域の社会福祉協議会が行っている貸付なども申請条件はありますが利用可能です。これは学生でも利用可能な10万円~20万円程度<無利子・保証人不要・返済開始(据置期間)1年以内・返済期間2年以内(償還期限)>の貸付制度です。(正式名称は社会福祉法人 全国社会福祉協議会HP 新型コロナウイルス感染症を踏まえた生活福祉資金制度による緊急小口貸付等の特例貸付 といいます)
以下は福岡市と北九州市の社会福祉協議会のリンクです。社会福祉協議会は殆どの市町村に設置されていますのでご自身の地域の協議会のHP等をご覧ください。
その他、NHK受信料についても相談窓口がありますので必要に応じてご確認ください。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う受信料のお支払いに関するご相談窓口について(NHKのHP)
国や地方行政、更に教育機関で今後更に様々な支援制度が用意されていますし、更に構築されていくと思われます。
また、このような状況下で不安な気持ちが増大している学生の方の心のケアを行う窓口を有している教育機関もあります。
困ったときにはまずは身近な方や自校の窓口に相談するなどして、1人でも多くの方が無事に卒業を果たされることを切に願います。
執筆・文責:株式会社ATGREEN 冨永