将来の世代が豊かに生きていける持続可能な社会の実現のために、環境省は2020年から「3つの移行」を推進しています。
その3つとは、
・脱炭素社会
・循環経済
・分散型社会
です。
今回は、そのうちの1つ「分散型社会」についてお話ししていこうと思います!
「分散型社会」とは?
日本では、気候変動、少子高齢化、地域の過疎化、生物多様性の損失などの問題に加え、最近では新型コロナウイルスの感染拡大という問題にも直面しています。これらの問題に対処し、持続可能な社会を作るために不可欠とされていることが「3つの移行」です。
その中でも「分散型社会」とは、各地域が特有の地域資源を最大限に活かし自立している社会のことを言います。
特に近年では、気候変動により全国各地で台風や豪雨などの自然災害が多発していたり、東京等でのコロナウイルスの感染爆発は都市一極集中型のデメリットとして顕著に現れ、「分散型社会」への移行の動きに拍車をかけています。
分散型社会に向けた3つの方針
では、どのように「分散型社会」を実現していくのでしょうか。環境省が掲げている3つの方針について、見ていきましょう。
方針1.「気候変動×防災」と適応復興
日本各地で頻発する気象災害は気候変動による影響が大きいことから、防災・減災対策に加えて、気候変動を抑える対策を同時に連携して取り組むことを政府は重視しています。
また、災害からの復興の面では、単に地域を元の姿に戻すという発想から、各土地の持つ機能を活かしつつ弾力的な対応を進める「適応復興」を推し進めています。
具体的には、水を吸収し川の水位上昇を防ぐ効果の持つ湿原を活かした減災対策(Eco-DRR)や、廃棄物処理施設において高効率ごみ発電設備の導入を推進し、地域の災害対応拠点へと進化させることなどが進められています。
方針2.国立公園の抜本強化
全国に34ヶ所ある国立公園は、火山活動等で形成された多様な地形、南北に長い国土、多様な気候帯等により、多様な景観や動植物を見ることができるほか、自然と共生した人の暮らしや文化を見ることができるという特徴もあります。
この国立公園を日本の観光業を支える柱の1つとして位置づけ、地方創生の切り札として基幹産業に育てることを目的に「国立公園満喫プロジェクト」が開始されています。利用拠点の多言語化や体験型コンテンツの充実、官民連携による来訪者に向けたカフェ設置などのサービス向上等を通し、国内外の誘客を促進する取組が行われています。
また、国立公園等の自然の中でリモートワークをするワーケーションは、感染症への感染予防や、働く人のアイデアを促すだけでなく、地域経済の活性化につながるとして、全国的に普及が進んでいます。
こうした取組は、自然を保護しつつ活用することで地域資源としての価値が向上する好循環を生み出すとして、注目されています。
方針3.新たな里地里山里海の創造
里地里山・里海とは、自然と都市との中間に位置し、農林業などに伴う人間の働きかけにより形成・維持されてきた環境のことで、特有の生物の生息環境としても重要な地域とされています。
しかし、地方の過疎化による土地の管理不十分や、里山エリアも都市開発が進められた結果、動植物の生息環境が失われるなど、生物多様性が脅かされているのが現状です。「住宅地に猿や熊が発生した!」とニュースになることもありますが、これも里地里山が崩壊していることが一因であると言えます。
そこで、民間等による生物多様性の保全活動に対し国が支援を行っています。
岡山県真庭市では、「フサヒゲルリカミキリ」と呼ばれるカミキリムシが、土地の管理不十分による生息地の減少などが理由で個体数が激減していることを受け、国の交付金を活用しながら生息環境の維持・改善を行っています。
また、鳥獣による農作物や森林等への被害を食い止めるためには、鳥獣保護管理者の高齢化問題を解決しなければなりません。大学等で人材育成のカリキュラムが検討されたり、ドローン等の新技術を活用した管理を行ったりと、人口減少社会においても実施可能な鳥獣保護管理技術の導入が推進されています。
まとめ
SDGsが複数の課題の統合的な解決を目指すように、日本においても持続可能な社会の実現に向けて、防災対策と生物多様性保全など、複数の環境課題に対して連携し調和の取れる取り組みが重要となってきています。
何事も広い視野を持って取り組みを進めていきたいですね。
出典:
環境省「令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r02/pdf.html
環境省「里地里山の保全・活用」https://www.env.go.jp/nature/satoyama/top.html
気候変動適応情報プラットフォーム「適応策 vol.18」https://adaptation-platform.nies.go.jp/articles/case_study/vol18_hokkaido.html