プラスチックごみ問題とグローバル企業のCSR

プラスチックごみ問題に対する世界の動き

近年、世界から注目を集めた環境課題のひとつに海洋プラスチックごみの問題があります。

2018年6月にカナダで開催されたG7(主要7か国首脳会議)で採択された、プラスチックごみによる海洋汚染問題への各国の対策を促す「海洋プラスチック憲章」。これに日本、アメリカが署名しなかったことは国内外で大きな話題になりました。皆さんもニュースなどで耳にしたのではないでしょうか。

その後、2019年6月に日本で行われたG20では、開催地となる日本のプラスチックごみへの対応に注目が集まりました。長野で行われた 「G20エネルギー・環境関係閣僚会合」では、各国が海洋プラスチックごみの削減に向けた行動計画の進捗状況を定期的に報告・共有する「G20 海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が決められ、さらに、大阪で行われた「G20サミット」では、 新たな海洋プラスチック汚染を2050年までにゼロにする事を目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されています。

このような世界的動きを受けて、企業は課題に対しどのような取り組みを行うべきなのでしょうか。

企業の社会的責任、課題解決への取り組み

ここで改めて、CSR(企業の社会的責任)について少し触れたいと思います。
CSRの究極の目的は「持続可能な社会の実現に貢献する」こと。
企業が、事業を通して社会課題の解決に貢献していくこと、それが今の時代に求められているCSRです
ここ数年で一気にプラスチックごみに対する対策が世界的に加速する中で、グローバル企業は課題解決に向けていち早く動き始めました。

グローバル企業の取り組みと今後の課題

ネスレ日本の取り組み

ネスレ日本は、プラスチックごみの課題解決に向けて、2019年より「キットカット」の外袋を紙パッケージにしました。これにより、年間約380トンのプラスチック削減を見込んでいます。
190カ国で事業展開するグローバル企業ネスレの中でも、「キットカット」の売り上げトップは日本。売り上げのうち10~15%はインバウンドの購入だそうです。これほど販売量の多い商品を対象に、プラスチック課題解決に取り組むのは、グローバルのネスレの中でも日本が初めてなのだとか。
まさに、キットカット売上トップのネスレ日本としての社会的責任を果たそうする取り組みであると言えます。紙ごみは燃やすとCO2を排出するため、環境負荷がなくなるわけではありませんが、プラスチックがごみとして外に出てしまうことを止めることが先決であるとし、いまできるベストな方法として紙パッケージへの変更を決定したそうです。
同社は今後2022年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にすることをコミットメントに挙げています。

スターバックスの取り組み

スターバックス コーヒー ジャパンは2019年11月、国内のスターバックス店舗で、FSC認証紙ストローの提供を2020年1月から開始すると発表しました。
プラスチックストローの代替品としてさまざまな素材を用いた検証の結果、紙製のストローへの切り替えを決定し、2020年1月から段階的に導入していくとのこと。
グローバル企業であるStarbucks(スターバックス)は2018年7月に既に、使い捨てのプラスチック製のストローを2020年末までに世界中の店舗で廃止すること発表していました。海洋プラスチック憲章」がG7で公表されたのが同年6月。こういった課題に対する対応の速さは、さすがといったところでしょうか。

マクドナルドの取り組み

一方で、マクドナルドでも、2018年にイギリスとアイルランドの1361店舗すべてでプラスチックストローの使用をやめ、紙製ストローに切り替えられました。
しかし、その紙製ストローはリサイクルが困難であることが明らかになり、これまでのプラスチックストローはリサイクルが行われていただけに、マクドナルドは批判に晒されてしまいました。
さらに紙製ストローの使いづらさによる苦情も多く、プラスチック製のストローに戻してほしいと求める署名には5万件以上の名前が集まったそうです。
同社は問題の解決に向けて引き続き取り組んでいくと公表しています。

まとめ

今後、プラスチックごみ問題の解決に向けて、多くの企業が動き出し、プラスチック代替品の登場が活発化することが予想されますが、今後の課題は、その代替品によって本当に環境への負荷が軽減されたのか、どれだけプラスチックごみの問題が解消されたのか、そのインパクトを明らかにすることではないでしょうか。
今後も企業の挑戦は続いていきます。